コミュニティ・バンク京信は、1971年に国内の金融機関としてはじめて「コミュニティ・バンク」を宣言しました。
そして1973年には、その考え方を言語化した書籍「コミュニティ・バンク論」を出版。そのなかには、当金庫の店舗のあり方について、次のような理念が掲げられています。
「支店は周辺地域のコミュニティの、生活の核にならなければならない。その意味で店舗の建物も、周囲の住民の方々が自由に利用できる場所でなくてはならない。」
「店舗内にコミュニティ・ホールをつくるといった店舗構造は、店舗を核としてコミュニティ活動をするための物理的な条件の一つである。」
「店舗の建物そのものが、周囲に、街に、よい影響を与えるものでありたい。」
(CDI(川添登、榊田喜四夫)編 「コミュニティ・バンク論 地域社会との融合をもとめて 」(1973)をもとに要約)
今回は、そんな「コミュニティ・バンク」としての店舗のあり方を実践した西陣支店の事例「西陣サロン」と「西陣Fes夏祭り」をご紹介します。
生まれ変わった西陣支店
西陣支店は、1950年に「千本支店」としてオープンして以来、70年以上にわたり営業を続ける歴史ある店舗です。
そんな西陣支店は、2018年に全面リニューアルオープン。これまで以上に、「地域コミュニティのための場」として活用できる店舗へと生まれ変わりました。
たとえば店舗2階には、職員とお客さまはもちろん、地域の方同士が交流する場として「クリエイティブコモンズNISHIJIN」を設けました。また、このスペースから掃き出し窓を挟んだ屋外にはバルコニースペースを設け、様々なシーンで人と人がつながり、交流することができる設計としました。
コミュニティで地域活性化を考える
そんな西陣支店は、「西陣サロン」という地域のコミュニティに参加しています。
西陣サロンのはじまりは2010年代の前半、当時の西陣支店長が、西陣という地域の未来について考える人々がゆるやかに繋がる場をつくることを目指して、地域で事業を営む経営者に声をかけて回ったことに遡ります。
西陣サロンメンバーの集まりには、旧店舗の時代から西陣支店2階のコミュニティスペースが利用され、「伝統産業を盛り上げるにはどうすればよいか」「観光客を呼び込むには」といった地域課題についての話し合いが行われていました。
そしてそのなかで生まれた「西陣支店での地域の商店をPRするイベントの開催」「新商品(和菓子)の開発」「地域の魅力を発信するクラウドファンディング」といったアイデアが、次々と実行に移されました。
そのような活動を続けるうちに、「西陣サロン」は次第に「コミュニティ・バンク京信 西陣支店」に属する組織ではなく、自律的に運営される組織となっていきました。
信用金庫の店舗で夏祭り!?
2024年8月、西陣サロンメンバーが中心となって、西陣支店を会場とした一大イベントが開催されます。
それが今回の事例「西陣Fes夏祭り」です。
このイベントは、西陣支店の駐車場、ロビー、2階の交流スペース、バルコニーをフル活用して、「夏祭り」を開催しようというもの。
これまでの「銀行」や「信用金庫」のお堅いイメージからは想像もできないイベントではないでしょうか。
イベント当日、駐車場とロビーには地域の飲食店などのマルシェが設けられました。
キッチンカーが3台出店し、クラフトビールなども販売されたマルシェには、真夏の暑さにもかかわらず多くの方が足を運ばれていました。
出展者である西陣サロンメンバーはいずれも地域のお店で、来場者の方にとっては「食」を通じて地域の魅力が感じられるブースとなりました。
2階の交流スペース「クリエイティブコモンズNISHIJIN」には、伝統産業の街・西陣らしさが感じられるワークショップブースが設けられました。
西陣織の端材を利用した缶バッジづくり、本物の織機を使った「つづれ織」体験、京畳職人によるミニ畳づくり体験などが出展され、大人も子どもも楽しみながら「伝統」に触れることができる空間となりました。
屋外のバルコニースペースには「夏祭り」らしい縁日を開催。射的やスーパーボールすくい、輪投げなどのブースには、子どもたちが行列をつくる様子がみられました。
そして「西陣Fes夏祭り」のフィナーレを飾ったのは、「ゑんま堂狂言」の公演。せりふのない無言劇で、理解するのが難しいともいわれる狂言ですが、「ゑんま堂狂言」はほとんどの演目にせりふがあり、子どもでも楽しめるのが特徴です。
今回の公演ではコメディタッチで親しみやすい二つの演目が披露され、はじめて伝統芸能に触れる方にも楽しんでいただける時間となりました。
こうして大盛況のうちに幕を閉じた「西陣Fes夏祭り」。
店舗が地域コミュニティのための場として活用されたこのイベントは、コミュニティ・バンク京信が目指す店舗のあり方の一つです。
当金庫はこれからも、このような取組を通じて「ゆたかなコミュニティ」の形成に向けて取り組んでいきます。
お客さまの声
西陣FES実行委員会/西陣サロンメンバー
頼-tano- 代表
宮武 愛海さま
西陣サロンは西陣地域の事業者が所属し、西陣地域の文化と仕事を次の世代に繋ぎ、地元復活を目指して志高く活動しています。
活動の一環として、地域住民に開かれたイベント「西陣Fes」を継続的に実施。西陣支店職員の皆様と協力しながら、西陣支店やその近隣店舗のお客さんから出店者を募ったマルシェや、「地域をよく知る」を軸に伝統・地域文化体験を取り入れた夏祭りを開催しています。
イベントの開催には職員さんが培った地域事業者さんとの信頼関係、運営の協力が欠かせません。事業者と職員さんの双方が西陣地域が抱える課題に共通意識を持ち、一人一人が自分ごととして動いてくれるからこそ継続的に、より拡大してイベントが実施できています。
京信さんならではの「おせっかい」を最大に活用させていただきながら、地域再興の一助になる。そんなコミュニティ作りを目指していきたいです。