都会の中の小さな漁港

「魚辰」の復活を目指して!

商店街で唯一の魚屋さん復活プロジェクト

滋賀県大津市の石山商店街にある「有限会社 魚辰」さまは、昭和50年代から40年以上続く、商店街では唯一の鮮魚店です。「都会の中の小さな漁港」として地域の方々に親しまれ、飲食店のニーズに臨機応変に対応するなど、飲食店オーナーから頼られ、愛される存在です。

そんな魚辰さまは2021年7月に火元不明の火災に見舞われ、店舗が全焼してしまわれました。茫然自失となられた同社の瀬尾さまは一時、廃業まで考えられました。

しかし、魚辰さまの再開を願う地元の飲食店オーナーや近隣住民からたくさんの励ましの声が寄せられ、瀬尾さまは事業再開を決意されました。

今回は、復活を目指すまちの魚屋さんに金庫職員が寄り添い、伴走したストーリーを紹介します。


魚屋さん復活プロジェクトの立ち上げ

魚辰さまは、石山地域の飲食店にとっても大切な存在であったため、同社が事業を継続されることが、地域の事業者さまにとっての願いでもありました。
魚辰さまと同じ商店街に店舗を構える当金庫石山支店営業担当の辻は、焼失した店舗を見つめる瀬尾さまと、それを励ます商店街の方々を見て、「何とかしてあげたい」「社長の役に立ちたい」という気持ちに駆られました。


コロナ禍であろうと、魚辰さまの取引先である飲食店の要望にいつでも応えることが出来るように、同社が多種多様な商品を取り揃えるなど、お客さま目線の営業方針は誰もが知るところでした。
日ごろから瀬尾さまの事業にかける想いを強く感じていた辻は、自らが中心となって「魚屋さん復活プロジェクト」を立ち上げ、自分たちに何ができるかを店舗全員で話し合いました。

マッチング掲示板とアンケートを駆使してお役立ち情報をご提供

店舗再建に係る資金計画は何より優先する課題でした。辻は他の金融機関に先んじて対応をすると、そのスピード感に瀬尾さまも感心されました。

辻はさらに、店舗再建後の事業計画の策定もサポート。利益率の改善が課題だった同社に対し、飲食店だけでなく、普段はスーパーで買い物をするような個人客も取り込むべきだと考えた辻は、金庫の持つツールを活用し、瀬尾さまに喜んでいただけるような提案をしようと考えていました。
そんな折、瀬尾さまから「店舗の再開に向けてどんな鮮魚店が成功しているのか教えてほしい」という要望があったのです。

辻はすぐに、社内ネットワーク「ビジネスマッチング掲示板」や、金庫職員を対象にしたアンケートで、他の鮮魚店での成功事例や、消費者の立場からの意見といった情報を収集することにしました。

すると掲示板では、他の鮮魚店の事例として「食品ロスの削減方法」「お客さまからの要望に沿った魚の加工などで付加価値を付けること」「SNSの活用」といった情報が寄せられました。

またアンケートでは、「加工や下処理を気軽に引き受けてくれる」「美味しい食べ方を教えてくれる」といったサービスを求める声や、「新鮮に見えるように照明が工夫されている」鮮魚店に好感があるという意見が寄せられ、辻はこれらをわかりやすくまとめて社長にお渡ししました。

辻の行ったアンケートに多くの職員が参加
当庫職員から寄せられた意見の一部

すると、それを受け取られた瀬尾さまは、涙を流してお喜びになられたのでした。

待ちに待った新店舗のオープン

2023年12月、待ちに待った「魚辰」の新店舗がオープン。新鮮な魚をリーズナブルに購入できる点や、瀬尾さまの温かい人柄が支持を集め、地域の方々に愛される鮮魚店として復活を遂げました。

魚辰さまの新店舗
商店街の方々から贈られたプレゼントのポロシャツ

店舗を建て直した現在、辻が行ったアンケートから消費者がまちの魚屋に何を求めているのかを知り、飲食店用の生魚だけでなく、家庭用に調理された焼き魚や煮魚、惣菜などの提供にも力を入れておられる瀬尾さま。「辻さんが渡してくれたアンケートのおかげで、これまで見えていなかった主婦の方々の要望などにも気づくことができ、より一層お客さまに寄り添った事業ができます」と嬉しそうに語られました。


お客さまの声

有限会社 魚辰
瀬尾 弘寿さま

料理屋さんで出るようなお魚をご家庭でも味わっていただきたいと心がけています。

新しい店では、売上を安定させるのに店頭にお客さんを呼ばないといけないと思っていたので、辻さんがリサーチしてくれたデータがとても役立ちました。

辻さんはフットワークが軽く、資金面の準備もしてくれて助かりました。まさに命の恩人です!


職員の声

コミュニティ・バンク京信
辻 貴史

火事があった日の社長の姿を見て、何かお手伝いできないかと想いが湧きおこり店内プロジェクトを立ち上げました。

マッチング掲示板とアンケートで得られた情報をまとめて瀬尾さまにお渡ししたとき、涙を流してお喜びいただいたことは決して忘れられません。

これからもお客さまのお役に立てるような営業活動を心掛けます。

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