当金庫は、2021年2月に京都の芸術創造発信拠点として活動する6つの民間団体とともに、新しい芸術応援システム「BASE(Bank for Art Support Encounters)」を発足しました。
発足のきっかけとなったのは、2020年から流行した新型コロナウイルスです。コロナ禍では、アーティストの制作活動のみならず、京都の文化を担ってきた民間の小劇場、ミニシアター、ライブハウス、ギャラリーなど芸術拠点の経済的脆弱性が顕在化し、危機的な状況に陥りました。
「BASE」はそんな状況を危惧した、THEATER E9 KYOTO、出町座、CLUB METRO、DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space、kumagusuku、両足院の6つの民間団体が、コロナ禍以後を見据えた京都における芸術と社会との持続的な共生を目指す仕組みづくりのために立ち上げられました。
当金庫はこの6つの団体と協働することで、これまでにない社会的な芸術活動サポートシステムや普及プロジェクトを実現し、多くの人にアートの魅力を体験いただくことで、文化芸術への共感の輪を広げていきます。
講義中に掲げられるBASE ART CAMPの旗
記者発表の様子(2021年2月)
実践型教育プログラム「BASE ART CAMP」
実践型教育プログラム「BASE ART CAMP」は、<働き生きる人のための芸術学校>としてアート思考を持った発想力豊かでクリエイティビティに溢れた人材の育成をめざして、2022年に開講しました。
既成概念や固定概念を打破し、自分の思考や感情から新たな課題を見つけ、自分と向き合い、オリジナルなアイデアを生み出していくというスタイルである「アート思考」が、ビジネスにおいても役立つと考えられ、BASEプロジェクトのメインプログラムとしてビジネスパーソン向けに実施されています。
半年間のプログラムの中で、美術、演劇、映画、音楽、写真といった多様なジャンルの京都に縁のあるアーティストが講師となり、順応編と登頂編の2段階のプログラムを通して、思考方法や制作プロセスを知り、体験することで学びを得ます。
第1期「BASE ART CAMP」
Adaptation <順応編>
(2022年4月~6月)
まず、前半の3ヶ月は『順応編』として、芸術的な思考もしくは所作に身体的に順応する段階として「3つの講義」と「5つのワークショップ」を実施。最初に自分の思考の特徴や現状を確認し、芸術的実践や思考に順応するためのプログラムとなっています。
実際に手や頭を動かす体験型のワークショップでは、アーティストと一緒にさまざまな観点から“つくる”体験をします。
(写真:発見のワークショップの様子)
Climb <登頂編>
(2022年7月~9月)
後半の3ヶ月は『登頂編』として、順応編を経て受講者の特性や目標に合わせて、美術、演劇、映画、音楽、写真の5つのルートへ分岐。プログラム最後の成果発表会での展示・発表を目指して作品づくりに挑戦します。
受講者は順応編で吸収した知識や体験、そして登頂編でも行われる実践型ワークショップを通して、最終的なアウトプット(作品制作)を目指します。
(写真:映画ルートの作品制作中の様子)
成果発表会
成果発表会はBASEのメンバーがそれぞれ運営する芸術施設(THEATER E9 KYOTO、出町座、CLUB METRO、DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space、kumagusuku)を舞台に、順応編・登頂編で学んだことの集大成として展示・発表されました。
展示・発表された作品は一般にも公開され、芸術関係者や芸大生、近くに住む地域の方々も来場されました。
(写真:写真ルートの成果発表展の様子)
<音楽ルートの成果発表会>
来場者で賑う様子
<演劇ルートの成果発表会>
演劇発表中の様子
<美術ルートの成果発表会>
制作した作品を紹介する様子
参加者の声
第1期「BASE ART CAMP」に受講者として参加された株式会社 中村藤吉本店 代表取締役の中村 省悟さま。
中村さまはこれまでデザインやクリエイティブなものを勉強した経験はありませんでしたが、普段の仕事の中で店舗のレイアウトを考えたり、椅子やテーブルの選定、商品のパッケージデザイン作成にかかわることが多くあったことから、新たなアイデアを取り入れる絶好のチャンスだと思われ参加されました。
株式会社 中村藤吉本店
代表取締役 中村 省悟さま
BASE ART CAMPに参加したおかげで自分の知らなかったことや見たことのないものを勉強しながら、自分に秘められた能力をアウトプットする方法を学べたことがすごく貴重で興味を持てました。
「自分の持っている角度や視野の逆ってどうなんだろう」と考えたり、「それを外したらどうなるんだろう」ということが広く深く考えられました。そういった考え方を今後の仕事とかプライベートにも活かしていきたいです。
仕事に関わる部分では、クリエイティブワークをする際に一見「無駄」に見えるものを「間」として捉えることができたらいいと思います。「効率」「生産性」とは真逆のところになりますが、それだけだと同じ視点でしか物事を考えられません。そのため、そういったところにこそアート的な思考がとても重要になってくるのだと思います。
仕事や社員へのフィードバックとしては、言葉だけで指示するのではなく、絵を描いて従業員に指示したり、意見を伝えたり工夫しています。カッコよく言うとアート思考なんですが、お客さまに不快感を与えないように注意を払いつつも、見た目にとらわれない自由な発想をもっていろいろとやって欲しいです。
BASE ART CAMPには、「アートなんて縁遠いし、自分には関係ない」「プライベートや経営とかには全く結びつかない」と思っている人にこそ、ぜひ参加して欲しいと思います。
「美術ルート」中村さんの手の彫刻作品
作品を紹介されている様子