京都信用金庫では、「ソーシャル企業認証制度 S認証」(S認証)の認証取得をサポートするSCA(ソーシャル企業認証アドバイザー)としての活動を行っています。
S認証は、一般社団法人 ソーシャル企業認証機構が運営する企業認証制度。社会課題の解決やESG経営を目指す企業に対し、経営方針や事業内容、社会的インパクトなどを基準に、評価・認証を行います。
この「キラリと光るS認証企業」シリーズでは、そんな「S認証」を取得した企業や、それをサポートしたSCAである当金庫職員の取組をご紹介します!
Vol.3 宗教法人 大本山一乗寺狸谷不動院
宗教法人 大本山一乗寺狸谷不動院さまは、京都市左京区、一乗寺にある真言宗修験道 大本山の寺院です。
「狸谷山不動院(たぬきだにさんふどういん)」とも呼ばれる同寺院の起源は、約300年前の享保3年(1718年)に木食正禅朋厚という僧侶が石窟を発見し、現本尊である不動明王を安置したことに遡ります。
その後の約230年間、石窟にひっそりと安置された不動明王のもとには、多くの人々が病気を癒してほしいといった願いを携えて訪れ、祈りを捧げました。この場所を管理する人がいないながらも、不動明王への信仰は脈々と続いていたのです。
そんな場所に狸谷山不動院ができたのは、約80年前の戦時中のこと。戦地へ赴く夫や子どもの無事を祈って多くの方が不動明王のもとを訪れる様子が行政の目にとまり、初代の貫主(かんす)を中心として、地域の人々が資金を出し合ってできたのが、狸谷山不動院です。
▼狸谷山不動院さまのwebサイトはこちら
http://www.tanukidani.com/
地域共通の願いである「交通安全」への取組
狸谷山不動院の3代目貫主である松田さまは、日々自問自答を繰り返しておられました。
地域の人々や企業が「地域のため」「社会のため」に活動しているなかで、お寺は「お寺の活動」にとどまっていてよいのだろうか、という想いを持っておられたのです。
「現代において狸谷山不動院が果たすべき役割とは、どんなものだろうか」。
そんな問いの答えを探すなかで立ち返ったのは、狸谷山不動院は、地域の人々の様々な願いを受け止める場所であるということでした。
以前より交通安全祈祷で多くの方が訪れていた狸谷山不動院。貫主の松田さまは、「交通安全こそ、地域の人々の共通の願いの一つである」と思い至り、この人々の願いを実現することこそ、地域社会のなかで果たせる狸谷山不動院の役割だと確信されたのでした。
そして生まれたソーシャルな取組が、「おえかき&交通安全イベントの開催」です。
多くの主体が想いに共感
イベント開催にあたっては、「同じ気持ちを持った人々と一緒に地域を良くしたい」という想いから、貫主の松田さまが協力を呼びかけられたところ、多くの企業・団体がその想いに共感し、呼びかけに応じました。
まず、大手自動車メーカーの販売店は、最新の安全サポート機能付き自動車の体験会を出展。
また、「子どもが描いた絵がデザインされたラッピングトラック」で有名な地元の運送業者からは、地域の幼稚園や保育園に呼びかけ、交通安全をテーマとした絵を200人以上の児童に描いていただくことができました。
この会社は過去にドライバーが死亡事故を起こしてしまったという悲しい経験を顧み、ドライバーの自制心を高め、周囲の車にも安全運転を促したいという想いで、トラックに絵をラッピングされています。
描いた絵は狸谷山不動院の山内に展示され、描いた子どもたちの多くも、保護者とともに来場されました。
そして、その絵を見た多くの来場者が子どもたちの純粋な心に触れ、交通安全の大切さを噛みしめていました。
さらに、当日はマルシェも開催され、松田さまがお声掛けされた地域の様々な飲食店が出店。水ヨーヨーすくいなどのブースも設けられ、山内はお祭りのような雰囲気となりました。
地域の人々を「交通安全」への想いでつなぐ
貫主の松田さまがこのようなイベントを企画した背景には、ある想いがありました。
それは、「交通安全といえば、講演会などの固いイメージが強い。家族で遊んで、楽しんで、みんなで考えるイベントにしたい。」というもの。
結果として、イベント当日はファミリー層を中心に300人以上の方が来場され、「子どもたちに楽しみながら交通安全について知ってもらえてよかった!」といった声も多く聞かれました。
また、来場者同士が交流する様子も多く見られ、単なる「交通安全のイベント」ではなく、「地域の人々の交流の場」ともなった今回のイベント。地域の人々が「交通安全」への想いでつながる一日となったのでした。
お客さまの声
狸谷山不動院
貫主 松田 亮海 さま
お寺というのは、その枠組みのなかで活動をしていくという感覚に陥ってしまいやすく、意外と活動の選択肢がありませんでした。
しかし、地域のなかで私たちが果たせる役割を改めて見つめ直したときに、多くの個人や企業の皆さまと同じように「社会のため」にあるべきだと思い至り、段々と活動の範囲が広がっていきました。
そこで企画したのが「交通安全イベント」で、これは宗教色が全くない形で開催させていただきました。
そのような活動を評価いただき、今回「S認証」をいただけたことを、大変嬉しく思っています。
今後も色々な行事やイベントの開催を通じて、地域コミュニティを充実させていきたいと思っています。
職員の声
京都信用金庫 修学院支店
ソーシャル企業認証アドバイザー(SCA)
伊藤 佑弥
狸谷山不動院さまのこれまでの歴史や現在の取組、貫主の松田さまの地域に対する想いをお聞きするなかで、同院は地域や社会、そこにおられる個人や企業に支えられて300年を送ってこられたことを知りました。
そのような地域のなかでの自分たちの役割を改めて見つめ直し、色々な形で地域に還元されている姿を見て、ぜひS認証を取得いただきたいと思いご案内しました。
同院は宗教法人ということで、法人形態こそ一般企業とは異なりますが、地域や社会に対する想いは共通しています。
これからも企業・団体を問わず、お客様のソーシャルな部分にしっかり目を向けて、SCAとしてのサポートを行っていきたいと思います。