伝統×新しさ

老舗 和菓子屋の挑戦を支援

QUESTIONからつながる出会い。京菓子司「末富」新ブランド設立をサポート

京菓子司「末富」さまは創業から120年以上続く、京都を代表する老舗の和菓子屋です。同店は京都の「茶の湯」文化の発展とともに、和菓子文化を牽引してきたお店の一つで、職人が一つひとつ手作業で行う伝統の技は、美しい和菓子を形作り、お茶会を彩ります。

1893年の創業当時、京都では和菓子店を、供物や慶事、お客さまのおもてなしのお菓子を扱う「上菓子屋」と、あまり砂糖を使わず、お腹の足しになるような日常のおやつを扱う「饅頭屋」、餅米を用いて、神社へのお供えや保存食、携行性の高い餅菓子を扱う「餅屋」に区別していました。同店は「上菓子屋」として、東本願寺や妙心寺などの寺社や茶道の各御家元にも和菓子が納めるなど、多くの行事や節目に欠かせない和菓子を作り続けてきました。

しかし、時代とともにお茶会の参加者は高齢化し、和菓子市場の規模は縮小・低迷。2020年に流行した新型コロナウイルスの影響で「催しものが開けない」「京都に訪れる人が減少しお土産が売れない」という状況に直面するという、さらなる課題も生まれます。

また、現代ではコンビニでも手軽に和菓子を購入できることもあり、「和菓子屋で和菓子を買う」という習慣がない世代が増加し、伝統的な和菓子の売れ行きは伸び悩んでいます。

同店の山口社長は「末富」を守るために試行錯誤するも、新しい事業展開や変革をすることが、「末富」の伝統とお客さまの信頼を損なってしまうのではないかという不安と葛藤につながり、行動を躊躇されていました。

QUESTIONがきっかけで

山口社長の様子を近くで見てきた当金庫の歴代担当者は「何とかしたい」と想いを募らせますが、なかなか解決の糸口は見つかりませんでした。このような中で、本店 営業担当の山本は、当金庫のネットワークを活かして、お菓子作りに必要な材料を取り扱う事業者を紹介したり、様々な形で日々サポートしていました。

そんな中、人・事業・地域をつなぎ、地域のコミュニティを育む当金庫の共創施設「QUESTION」がきっかけで、山口社長にある出会いが訪れます。

「QUESTION」には、利用者から寄せられる問いを共有し、より専門的な視点で、ともに答えを導きだしていく協力者「パートナー」がいます。QUESTIONパートナーの一人で、フリーマガジンや書籍の出版、広報ツール制作を営む株式会社union.aの円城新子さんからの紹介で、山口社長は、ブランディングコンサルタント事業等を担う、グラフ株式会社の北川一成氏と出会います。

北川氏は「末富」の伝統的な技術や受け継がれる想いを称賛し、「『末富』のブランド力があれば、新しいブランドを生み出すことがきっとできます。また、京菓子は歴史的にみると、基本的には革新的で最先端をいくものです。末富の伝統を軸に、新しい事業に踏み出してみてもいいのではないでしょうか。」と提案しました。これに対し、山本も「今の『末富』のためにできることを、そして、必要なことを進めていくといいのでは」と山口社長を後押し。山口社長は、北川氏が「伝統」とはどういうものかを理解され、これからの社会に、どのように「伝統文化」というものを活かしていけるのかを考えてこられた点を信頼し、新ブランドの設立を決断されました。

新ブランド設立までの間、山本は、ブランドの設立にあたって必要になってくる資金調達のために事業再構築補助金の申請をサポートし、資金面の課題を解決しました。さらに、和菓子業界のマーケットのデータを収集・整理し、そのデータをまとめた資料をつくるという形で、新ブランドの設立を支援しました。

こうして、2022年8月に末富がプロデュースする新ブランド「SUETOMI AoQ(青久)」が誕生しました。

「SUETOMI AoQ(青久)」で新しいお菓子のあり方を提案!

「SUETOMI AoQ(青久)」のお菓子は、大手百貨店などで販売されています。「SUETOMI AoQ(青久)」は、フィナンシェやチョコレート、カステラなどの洋菓子の素材に、「末富」の職人が作るあんこや麩焼きなど、和菓子の要素を掛け合わせることで、「洋菓子×和菓子」の新しいお菓子のあり方を目指しました。

「SUETOMI AoQ(青久)」には、「末富」のお客さまに加えて、洋菓子好きのお客さまや若い世代など、これまで「末富」に来店されていたお客さま以外の方も来店され、お土産や自分へのご褒美として購入されています。

山口社長は「SUETOMI AoQ(青久)をきっかけに、和菓子屋さんの和菓子を食べる機会が少ない若い世代にも、和菓子に親しんでもらいたい」と期待されています。

事業者さまの声
株式会社 末富 代表取締役
山口 祥二さま

「末富」は、夢と楽しさの世界をテーマに、人の情感に訴えられるようなお菓子を目指して作っています。新しい時代になった今でも、お菓子を通して、お客さまをワクワクさせられるようなことができればと思っており、食べ方の提案などからでも、今までにないような新しいお菓子の形を築いていきたいと考えています。

京信さんには、「青久」を設立する前からも、京都信用金庫のネットワークを活かして、末富の和菓子に必要な材料を取り扱う事業者と引き合わせてもらったりとご協力いただいています。そういうところで、いつも助かっています。

担当者の声
本店職員 山本 泰史

今回の新ブランドの設立には、山口社長と北川さまがメインとなって尽力されましたので、どんなアイテムが店頭に並ぶのかは、実は直前まであまり知りませんでした。商品が完成したとき、百貨店に並ぶ様子を拝見しに伺ったのですが、「末富」の水色と新ブランド「青久」の青色の商品が並んでいる様子は、遠くからでもすぐに見つけることができ、ショーケースがとてもきれいだったのが印象的です。これまで葛藤されていた様子を知っている分、お菓子が店頭に並んでいる姿を目にしたときは本当にうれしく感じました。

2023年2月には「青久カフェ」もオープンするので、これからもできる限りのサポートをしていきたいと思います。

当金庫は、これからもお客さまの抱える課題の解決をめざし、お客さまの挑戦をサポートしてまいります!

ビジネスマッチング その他の事例 PROJECTO METHOD