減り続ける京町家
京都に残る歴史的な建築である京町家。
平成28年には約4万軒あった京町家ですが、令和6年の調査では5,000軒以上も減り、34,580軒にまで落ち込んでいることが確認されました。京都市では減少を防ぐために解体着手の1年前までに、同市への届出を義務付けるなど、解体前に今一度、京町家の保存を検討してもらえるように働きかけているものの、現在も減少の一途をたどっています。
また、京町家の中には「再建築不可」「前面非道路」「建築確認書不備」など、特有の課題があり、住宅ローンや事業者ローンでは対応できないケースも少なくありません。
京町家を後世に残したいという皆さまの想いに応えるため、当金庫では居住用に京町家を購入、修繕される方に「のこそう京町家」、事業用に京町家を購入・利活用される方に「活かそう京町家」をご用意し、資金面から京町家の保全を全力でお手伝いしています。

今回は、当金庫の「活かそう京町家」をご利用いただき、京町家を再生・利活用されている西陣支店と下鴨支店のお客さまをご紹介します。

青春画廊という名のゲストハウス

「パラモデル」というユニットで活動されている現代美術アーティストの林泰彦さま。林さまは芸術家として活動する傍ら、西陣エリアと東山エリアで京町家をリノベーションし、「青春画廊」という名のゲストハウスを経営されています。今回はそのうちの一つ、青春画廊西陣にお邪魔しました。
林さまがゲストハウスの運営を検討されたきっかけは、2014年にミシガン州立大学に併設されている美術館で個展を開かれた際、「Airbnb(エアビーアンドビー)」の宿泊施設を利用したことでした。Webサイト上で、ホストと旅行者をつなぐ仕組に感銘を受け、帰国後、運営をスタートされました。


林さまが京町家にこだわる理由は、過去20ヵ国に及ぶ海外を歴訪する中で、その国の文化や価値は、残されてきた古い建物にあると実感されたことでした。建国から歴史が浅いオーストラリアやアメリカ合衆国では古い建物を残すことに注力し、そのための法整備を行っているのを見ると、京町家を取り壊していくことは自分たちの文化を破壊していくようなものだと危惧されています。
また、林さまにとって京町家は、ご自身の美術の作品性に通じる点があり、「間取りの柔軟性が高い尺モジュールという規格の上に成り立つ、洗練された住居」として大切に考えられています。
この物件を、青春画廊西陣に決められた理由は「独自の文化を持つ職住一体の織屋建て」だったからだそうです。今後も若手芸術家の作品を発表できる場としての京町家ゲストハウスを増やしていきたいと、熱く語られました。

青春画廊とは――
作品発表の場が少ない京都で、若手芸術家が海外の美術愛好家に向けて自身の作品をプレゼンできる場を提供し、宿泊者が気に入った作品を購入できるビジネスモデルで、恵まれてこなかった芸術家の青春を取り戻すこともコンセプトとしています。
お客さまの声
ゲストハウス「青春画廊」
オーナー 林 泰彦 さま

「青春画廊」に展示している作品は私自身がピックアップしたアーティストの作品です。彼らに京町家をベースとした宿泊施設兼ギャラリーを利用してもらうことで、役に立てればいいなと思います。
昨今は、物件も金利も上昇傾向にありますが、国際情勢も鑑みながら、事業を拡大していきたいと思います。
職員の声
コミュニティ・バンク京信
松井 遥平

西陣は、その長い歴史の中で、織物産業と京町家が深く結びついており、職住一体の京町家がまだまだ多く残っています。
そのような京町家を林さまのように、現代アートとともに残していくことは、歴史を紡ぐ上で大切なことであると改めて感じています。

京町家から京町家へ
下鴨エリアで「自家製天然酵母のパンの店 はちはち」を営む横田 耕一さま。
店舗兼お住まいは築100年以上の趣のある京町家です。横田さまは以前も西陣の京町家で営業されていましたが、建物の老朽化に伴い2016年6月、下鴨へ移転。移転先で新店舗として選ばれたのも京町家でした。ドイツ系ライ麦パンを扱う横田さまにとって、酵母菌を扱う環境には京町家が持つ特性がピッタリなのだそうです。
お店の前の通りは今ではほとんど見かけなくなった砂利道で、人や車が通るたびにその気配がお店に届くのも京町家ならでは。この家の大家さんはこのお店を含む4軒の京町家を所有されており、この風情を大切に守り続けておられます。


横田さまは、京町家に詳しい不動産会社の紹介で、“京町家を借りて改修し、事業展開していく”というニーズを叶える商品「活かそう京町家」を活用し、リノベーションをされました。
元は専用住宅だったものを京町家の景観を損なわないように、大家さんの監修のもと、店舗付住宅へと改装。
京町家のイメージの一つである「夏は風が抜けて涼しい」という点についてお尋ねすると、「実は、パンを焼くオーブンの熱がこもってむちゃくちゃ暑いんですよ」との答えが。その飾らないお言葉の中にも京町家に対する深い愛情が感じられました。

お客さまの声
自家製天然酵母のパンの店 はちはち
オーナー 横田 耕一 さま

パンの原料となる酵母は京町家に使われている土壁に張り付くというのが持論です。
昔、岡山で住んでいた家もこのような古い家だったので、京町家にはなじみがあって、あの頃からの想いが続いているようなところがあります。
こういう落ち着いた雰囲気の店でドイツパンを中心とした食事メニューを提案していきたいです。
職員の声
コミュニティ・バンク京信
西村 日菜子

横田さまとの出会いのきっかけは、長年営業されていた店舗の移転でした。
「活かそう京町家」をご利用いただくことで、以前の店舗の面影を感じる素敵なお店が完成しました。
長年たくさんの方から愛されているお店の新店舗づくりのお手伝いができたことは、当金庫としても大変嬉しく思います。




