伝統ある社寺建築を

守り、未来に繋いでいく

◇有限会社 匠弘堂◇キラリと光るS認証企業 Vol.5

コミュニティ・バンク京信では、ソーシャル企業認証制度 S認証」(S認証)の認証取得をサポートするSCA(ソーシャル企業認証アドバイザー)としての活動を行っています。

S認証は、一般社団法人 ソーシャル企業認証機構が運営する企業認証制度。社会課題の解決やESG経営を目指す企業に対し、経営方針や事業内容、社会的インパクトなどを基準に、評価・認証を行います。

この「キラリと光るS認証企業」シリーズでは、そんな「S認証」を取得した企業や、それをサポートしたSCAである当金庫職員の取組をご紹介します!


Vol.5 有限会社 匠弘堂

今回ご紹介する有限会社 匠弘堂さまは、社寺の新築や修理、復元を業とする宮大工の会社です。

同社の社長 横川さまは、自身の師匠である故岡本棟梁より受継いだ「伝統的木造建築技術」を駆使し、日本文化の伝承と発展に貢献することを企業理念に掲げています。

▼匠弘堂さまの公式webサイトはこちら
https://www.kyoto-shokodo.jp/

伝統ある社寺建築を守りたい

横川さまは同社の代表となる以前は、大手電機メーカーに勤めていました。しかし、「数年持てば十分」という、3~5年で壊れるモノを大量生産・大量消費するモノづくりのあり方に疑問を感じておられました。
勤めていくなかで「"千年つなぐモノづくり"に取り組みたい」という想いが芽生えた横川さまは、退職を決意し建築設計会社に転職。

この転職が横川さまにとって、大きな転機となりました。自身の設計した寺院の現場で、匠弘堂の原点であり、横川さまの師匠となる岡本さまに出会われたのです。


横川さまは、幼い頃から日本の伝統的建造物に関心があり、社寺建築に憧れを抱いておられました。そんな横川さまにとって、岡本さまとの出会いは衝撃そのもの。
岡本さまの宮大工としての卓越した技を目の当たりにし、横川さまは「宮大工の技術と社寺建築の素晴らしさを後世に伝えたい」と考え、匠弘堂を創業しました。


社寺建築は、日本らしい景観を形作る大切な要素の一つであり、細やかな造形や構造は宮大工の技術により創り出されています。
同社は、「見える所は当たり前、見えない所ほど気配りをせなあかん・・・」という故岡本棟梁の教えを大切に守り、創業からノークレームで高い品質の社寺建築を生み出しています。

環境保全に繋がる伝統工法

伝統工法を用いる木造建築と現代建築では、使用している材料に大きな違いがあります。
現代建築で使用する材料は耐用年数も短く、修理されることもなく廃棄され、ゴミとなるモノが多くあります。一方で、伝統工法による木造建築は、国産材をふんだんに使用した自然素材100%で構成されています。そのため修理することで半永久的に使用することが可能であり、仮に朽ち果てて腐ってしまったとしても土に返すことができます。

このような特徴から、伝統工法を継承していくことは「資源循環」や「環境保護」に繋がっていくのです。


宮大工を育てて、繋いでいく

伝統的な社寺建築やその技術を守り、未来へと繋いでいくためには「宮大工」の存在が必要不可欠となります。

若い担い手が減少傾向にある宮大工ですが、日本古来の伝統や文化を守るためにも横川さまは、新卒採用や社内での人材教育・技術勉強会などさまざまな取組を積極的に実施。宮大工の育成と技術向上に努めておられます。

工房見学会やSNSで社寺建築と宮大工について知ってもらう

同社では、次世代の宮大工を育てていくために、その仕事を広く知ってもらうための活動に取り組んでいます。具体的には「職場見学」や「一般公開」のほかに、学校や民間事業を受け入れた工房視察見学会(オープンファクトリー)も開催。また、建築主側の関係者や学校、業界、近隣住民に向けての工事中の現場の見学会、不登校の生徒向けのワークショップにも取り組んでいます。

参加した学校からは、「実際に仕事をしている人から仕事の目的や、やりがいを聞けるので子どもたちの学びにつながっています」などのお声があり、横川さまは「次世代を担う子どもたちに、伝統建築の魅力や仕事へのこだわりについて伝えることができている」と、成果を実感されています。

また、同社では2018年に広報部を新設。X(旧Twitter)やInstagramの運営を行い、お客さまである神社や寺院、将来担い手になるかもしれない若い世代や学校関係者、伝統建築に興味を持っている方に向けて、社寺建築に関する情報を発信しています。
ほかにも、同社のwebサイトでは仕事風景の写真や社員のインタビュー記事を数多く掲載し、働く姿が想像しやすいよう工夫をしています。するとサイトを見た高校生、大学生、進路指導の先生など、多くの方から毎年問い合わせが殺到。
約2年ごとに実施する新卒見習の採用では、自社のwebサイトのみで募集をかけ、2022年には30人の応募者を集め、2人の大卒者を採用することができました。

4,000人超のフォロワーがいる同社のInstagram

伝統的木造建築技術を繋ぐための勉強会

横川さまは、宮大工見習の新卒採用だけでなく、宮大工としての技術を継承するための取組として定期的に勉強会を開催しています。

例えば、「釿(ちょうな)」「槍鉋(やりがんな)」「鉞(まさかり)」といった1,000年以上も前から使用されている伝統的な大工道具を、若い宮大工も使うことができるように、月に一度社内外で練習会を実施。また、「全国青年技能競技大会」にも同社で働く宮大工たちは積極的に参加し、技術向上や互いに研鑽する社内風土を醸成しています。

それだけでなく、同じ業界の若手大工のためにオープン勉強会も10年以上継続して開催。業界全体の技術向上にも取り組むことで、伝統ある社寺建築を未来に繋いでいくために取り組まれています。

伝統産業の担い手×若い世代

次世代の職人が不足しているのは社寺建築だけでなく、日本の伝統産業全体において生じている深刻な問題です。
この問題を解決するためにも、若い世代の方たちに伝統産業について知ってもらう必要があると考えた横川さま。今後は、担い手不足の伝統産業と若者たちがマッチングできるような活動を検討していきたいと考えておられます。


お客さまの声

有限会社 匠弘堂
代表取締役社長 横川 総一郎 さま

単に良いものを作るだけでなく、自分たちの仕事が世の中にどう貢献しているのかを可視化し、それを世の中に認知してもらうこと。それが、匠弘堂のためにも、従業員のためにも必要という意識をもってきました。

今回S認証を取得に至ったきっかけは、京信の中井さんからS認証取得にチャレンジすることを勧めていただいたからです。無事に認証をいただくことができて、ホッとしています。

社寺建築は、ほとんどが100%近い自然素材でできていて、それを何百年も使い続けるSDGsの考えそのものだと思っています。
このような私たちが意識を持って取り組んでいることを学校教育などにも取り入れて、多くの方に知っていただけたらと思います。


職員の声

京都信用金庫 岩倉支店
ソーシャル企業認証アドバイザー(SCA)

中井 康博

匠弘堂さまは、過去・現在・未来を紡ぐソーシャルな取組であると確信していたので、真っ先にS認証をご案内しました。

同社は「人を育てる」という点を重視されています。人としての成長があり、そこから技術を身に付けることにより、初めて後世に残るような良い仕事ができると考えておられます。
同社の「先人たちが造られた神社仏閣をはるか先の未来にも残す仕事」のサポートができるように、今後も支えていきます。

地域にはソーシャルな取組をされている企業は、たくさんあると思います。SCAとして、発信のお手伝いや事業のサポートをできるように今後も活動してまいります。

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