京都市伏見区に本社を置く 株式会社 カネ七畠山製茶さま は、1751年創業の宇治茶製造卸問屋です。
今回は、江戸時代から続く同社の伝統と革新を融合させ、事業に大きな転換をもたらした20代目代表者・畠山さまと、それをサポートした伏見支店の二人の担当者のストーリーをご紹介します。
転機を迎える老舗
2020年頃、同社は転機を迎えていました。食の多様化による日本人の「抹茶離れ」などの要因で、国内需要が徐々に減少していた中、新型コロナウイルスの全国的な流行により観光地などへの販売も大幅に減少、事業の先行きが見込みにくい状況となっていたのです。
そんな中、カネ七畠山製茶さまの営業担当者である俣野は、畠山さまとの面談で、明るいニュースを耳にします。
それは、フランス・パリで行われた「Japanese Tea Selection Paris」にて、同社の有機抹茶が金賞に選ばれたというもの。「オーガニック」という言葉が現在ほど知られていないころからの、同社の有機抹茶に対するこだわりの賜物でした。
そのお話を伺った俣野は、「これをきっかけにカネ七畠山製茶さまのブランディングや販路拡大ができれば、業況を良い方向へ向けられるのではないか」と思い立ち、畠山さまと二人三脚になってのサポートを開始します。
あの手この手でブランディングをサポート!
俣野はまず、当時創設直後だった企業認証制度「ソーシャル企業認証制度 S認証」の取得を提案し、申請をサポートしました。
この制度は、企業が行っている「社会」や「環境」に良い影響を与える取組を評価・認証するもの。俣野はこれを取得することで、カネ七畠山製茶さまが行っている様々な取組を見える化し、対外的なブランディングにつなげられると考えました。
ー カネ七畠山製茶さまの「ソーシャル」な取組 ー
・茶摘み体験や茶道教室の実施などによる、文化の継承
・地元の学校での授業などによる、伝統産業の後継者育成
・有機抹茶の販売による食の多様性への対応、食の安全への貢献
俣野はまた、「地域での認知度向上」という側面からも、同社のブランディングをサポートしました。
あるときは本部と連携し、人事部とつながりのある地元高校へ交渉に赴いて、カネ七畠山製茶さまの本社にある茶室に生徒を招いての体験型授業を企画。またあるときは伏見港公園で開催されるイベント「みなとマルシェ」に出展者としてお招きし、イベント来場者の方々に同社のことを知っていただくきっかけづくりを行いました。
体験型抹茶カフェのオープンへ - 補助金申請をサポート
俣野が行ったサポートの中でも代表的なものが、「体験型抹茶カフェ」のオープンに向けた「事業再構築補助金」の申請サポートです。
カネ七畠山製茶さまの本社敷地内には長年使用されていない土地があり、代表の畠山さまには、この場所を抹茶の魅力を発信する拠点、そして地域の方々に使っていただける交流拠点にしたいという想いがありました。
この想いを伺い、これまでBtoBを中心に事業を展開されてきた同社にとって、この構想は大きな転換点となると確信した俣野は、設備投資の負担を抑えながらこの構想を実現するため、事業再構築補助金の活用を提案。申請書のブラッシュアップを何度も繰り返し、採択に向けたサポートを行いました。
そんな中、定例の人事異動で辞令を受けた俣野は、2022年4月、名残惜しさを感じながらも、その想いを後任の担当者に引き継ぐこととなります。
想いを受け継ぎ、サポートを継続
俣野からバトンを受けたのは、以前から伏見支店に所属していた阿津川(あづかわ)。
目前で俣野のサポート姿勢を見ていた阿津川はその想いを受け継ぎ、カネ七畠山製茶さまに向けた様々な形でのサポートを継続していきます。
阿津川はまず、同社と様々な企業を引き合わせ、同社の課題を解決していきました。例えば、「どうしても出てしまう廃棄抹茶をどうにか有効活用できないか」というお悩みに対しては、野菜から絵の具を製造する企業をマッチングし、見事成約。他にも、洋菓子店やネットショップ事業者とのマッチングなどを通じて販路拡大に向けたサポートも行いました。
さらに、俣野から引き継いだ「事業再構築補助金」の申請や、業況の拡大に伴って発生する運転資金の調達支援、企業交流会の案内、地域のイベントへの出展案内などを通じて、多角的なサポートを行いました。
待ちに待った吉報!
阿津川が担当を引き継いでからしばらくが経ち、畠山さまの経営努力と俣野・阿津川のサポートの結果が業況にも良い形で表れ始めた頃、ついに待ちに待った吉報が届きます。「事業再構築補助金」の採択通知です!
2名の担当者が長期にわたってサポートを継続してきた申請だけに、畠山さまと阿津川の喜びもひとしお。会社経営におけるパートナーでもある畠山さまの奥様とともに、喜びを分かち合いました。
その後、建物の解体と新築が進み、2024年3月、ついに体験型抹茶カフェ「KANE7 Matcha Lab」(カネシチマッチャラボ)がオープン!
テーブル席だけでなく、バーのようなカウンターでも淹れたての抹茶やお茶菓子、ジェラートなどを楽しめる同施設。「ラボ」という名前には、「抹茶の様々な使い方、楽しみ方を届け、抹茶の新しい可能性を創造する場にしたい」という想いが込められています。
※カフェ利用には予約が必要です。くわしくは KANE7 Matcha LabのWebサイト まで。
「KANE7 Matcha Lab」には、もう一つの大きな役割があります。それは、カネ七畠山製茶さまが現在特に強化を図っている「海外販路開拓」に向けた商談スペースとしての役割です。
2010年代前半という早い段階から抹茶の海外向けの販売に取り組まれてきた同社。その取組が実を結び、昨今の世界的な抹茶ブームも追い風となって、同社には海外から多くのオファーが届いています。
そのようなクライアントとの商談にこの場所を利用し、単に「抹茶」という商材を販売するのではなく、日本の「抹茶文化」を体験していただいた上で取引を行うことで、双方にとって有益なビジネスにつなげられています。
2人の担当者がその想いを受け継ぎ、創業270年の老舗を支えた今回のストーリー。
コミュニティ・バンク京信では、すべての職員が俣野や阿津川のように、お客さまに寄り添い、人と人をつなげることを大切にしています。
お客さまの声
株式会社 カネ七畠山製茶
代表取締役 畠山 友晴 さま
俣野さん、阿津川さんは、事業再構築補助金の申請に向けて「ああでもない、こうでもない」と一緒に事業計画を考えてくれたり、申請書を何度も添削してくれたりと、「金融機関の人がそこまでしてくれるのか」という営業マンでした。
お二人に限らず、京信の職員さんには「寄り添ってもらっている」という人間味を感じます。
複数の金融機関とお付き合いをしてきましたが、いまでも京信さんとお付き合いしているのは、やっぱりそういうところが理由ですね。
いまはHACCP(ハサップ)対応に向けて動いているところなので、阿津川さんにもサポートをお願いしたいと思っています。
これからも末永いお付き合いを、よろしくお願いします!
職員の声
コミュニティ・バンク京信 北大路支店
俣野 亮太
畠山さまに初めてお会いしたときは、国内需要の低迷で厳しい状況におられましたが、そんなときでも事業を通じて社会に貢献したいという「ソーシャルマインド」を持って新しいことにチャレンジされている姿を見て、応援したいと強く思いました。
「S認証」では、繰り返し申請内容のブラッシュアップをさせていただきました。このプロセスは、畠山さまにとっても私にとっても、会社の強みや事業の方向性を整理する機会となり、その後の業況改善にもつながったのではないかと思います。
念願の抹茶カフェのオープン、本当におめでとうございます。これからも抹茶の価値を高め、文化と伝統を守り、進化させていっていただけるよう、応援させていただきます!
コミュニティ・バンク京信 伏見支店
阿津川 太地
畠山さまの前向きな姿勢に寄り添いながら、ニーズを感じ取り、そこに当金庫が提供できるサポートを掛け合わせることで、事業の課題解決に努めることを大切にしました。
そのような意識で、金融支援に加え、補助金申請やイベントのご案内、社員さま向けのセミナーなど、資金以外の面でのサポートに取り組んだことが、畠山さまにお喜びいただくことにつながったのだと思います。
この姿勢が貫けたのは、前任者の俣野から畠山さまの想い、今後の事業展開などについて情報共有を受けており、「次に何をすべきか」というビジョンが明確になっていたからでもあります。
私も将来、他の職員に担当を引き継ぐことになってもお客さまに安心してご相談いただけるよう、信頼関係と情報共有を大切にしたいと思います。
そして、一つでも多くのお喜びの声を生み出せるよう、引き続きお客さまに寄り添っていきます。