コミュニティ・バンク京信が運営する共創施設「QUESTION」1階のカフェ・バーでは、「様々な人が集まりつながる場所」となることを目指し、たくさんの実験を行っています。
今回は、2023年12月にオリィ研究所(東京都中央区)と当金庫が共同開催したキャラバンカフェをきっかけに、この場所に分身ロボット『OriHime(オリヒメ)』を導入した事例についてご紹介します。
人類の孤独を解消する
「人類の孤独を解消する」をビジョンに、病気や障害などにより外出困難な方々の社会参画に取り組むオリィ研究所。
同社は、テクノロジーによって新たな形の社会参加を実現し、人々の孤独を解消することをミッションとして、遠隔操作で動かせる小型分身ロボット『OriHime』を開発・提供しています。
オリィ研究所の手掛ける事業の一つに、ALS病などの難病や重度障害で外出困難な方々が「分身ロボット」を遠隔操作し、スタッフとして働くという新しいかたちのカフェ事業があります。
この取組は、「体を動かせなくても、働きたい」という意欲を持つ人々の社会参加を、分身ロボットという選択肢によって実現させることを通じて、新たな働き方の可能性を広く社会に知っていただくことを目的としています。
QUESTIONでキャラバンカフェをオープン!
同社は東京・日本橋に分身ロボットカフェの常設店をオープンする傍ら、2022年から全国で期間限定のキャラバンカフェを継続的に実施してきました。
そして2023年12月、当金庫が運営するQUESTIONを会場に、「分身ロボットカフェDAWN ver.β in Kyoto」を期間限定でオープンしました。
カフェでは、「パイロット」と呼ばれる方たちが、自宅から分身ロボットを遠隔操作し、お客さまにサービスを提供。テーブルに設置された小型のロボット『OriHime』を操作して注文を取り、自走可能な大型の『OriHime-D』で飲み物や食事を配膳する仕組みです。
来店された方々は分身ロボットを介してパイロットとコミュニケーションを楽しんでおられ、テクノロジーによる新たな働き方の可能性を体感できる時間となりました。
QUESTIONで本格導入スタート
QUESTIONの1階では、このキャラバンカフェをきっかけとして、2024年8月より週に2日、OriHimeを本格導入しています。
パイロットの方々には、QUESTIONに来訪されたお客さまに対してお声掛けをするほか、「スナック織姫」というイベントではホストとなり接客をこなすなど、様々なかたちで仕事をしていただいています。
OriHime パイロット・いずみさんのストーリー
現在、QUESTIONで稼働をしているOriHimeパイロットの一人であるいずみさんは、生まれつき患っている脊髄性筋萎縮症(SMA)のために、一日の大半をご自宅のベッドの上で過ごされていますが、わずかに動かせる指先と視線入力でOriHimeを操作することで、目線を合わせたり、声に合わせて身振り手振りをつけたりしながらコミュニケーションをとることができます。
—― いずみさんにとってOriHimeとは
経済的自立をしたいとずっと考えていましたが、仕事場に通うことは難しく、雇ってくれる会社もなかなか見つかりませんでした。そんなとき、運命的に「分身ロボットのパイロット募集」を見つけ、勇気を出して応募しました。現在はその収入のおかげで、昨年は旅行ができる程度に生活に余裕ができました。
QUESTIONでの稼働で印象に残っていることは、「スナック織姫」のイベントで訪れたお客さまが夢を語ってくれたことです。入り口でのご案内の場合は立ち話なので、なかなかじっくりとお話しすることも少ないのですが、QUESTIONのバーカウンターでなら時間を気にせずに喋ることができ、深いコミュニケーションをとれたのが嬉しかったです。
OriHimeの魅力は、感情表現ができることだと思います。私自身は身体が動かないので、言葉で伝えたり、顔で笑ったりするくらいしか感情表現ができません。
それがOriHimeなら「バイバイまたねー」と手を振って挨拶をしたり、頭を抱えたりして感情表現ができるのがとても嬉しいんです。
今後の目標は分身ロボットで働ける場所を増やすことです。そうすれば私と同じ境遇の人も働ける可能性ができますよね。まだまだOriHimeのことを知らない人は多いですが、私たちの活動を通して認知度を上げていけるよう頑張ります。
オンライン会議ツールの普及や、在宅勤務などの多様なワークスタイルが広まりを見せている近年。
相手との物理的な距離を越えて、心を通わせるコミュニケーションが可能であることを実感する機会となりました。
QUESTIONを訪れた際には、いずみさんをはじめとするパイロットの方々と分身ロボットを介してコミュニケーションを楽しんでみてはいかがでしょうか。
職員の声
コミュニティ・バンク京信
山岡 亮太郎
「人類の孤独を解消する」というビジョンを掲げるオリィ研究所さまの活動と、地域の問い(課題)の解決を目指すQUESTIONの活動に近しいものを感じました。
当たり前かもしれないですが、さまざまな理由で外出困難な方々と私たちが接する機会は多くありません。だからこそ、OriHimeを通じて繋がれた時の嬉しさや、新しい世界を知れた喜びが大きいと思っています。
遠隔就労という新しい自己実現の形を、ぜひQUESTIONで体感してみてください。