京都市山科区に本社を構える株式会社 金山精機製作所さまは、航空機や半導体関連の金属加工などを手掛けられる企業です。同社は、船舶用の大型エンジンをはじめとする潤滑油供給や、様々な機械の自動化のための高圧の給油機器など、多様な用途に利用される注油機の製造ができる、日本で2社しかない会社の一つであり、高い技術力を保有されています。
同社の代表取締役社長の金山さまには以前より、後継者である「ご子息の将来」と「会社の将来」についてのお悩みがありました。今回は、2つの悩みを抱える同社の課題に寄り添い、課題解決をサポートした事例を紹介します。
旅館での研修で、異なる業種を経験
まず、ご子息の将来について。金山社長はご自身の長男で、同社の金山 紘己マネージャーに対して、「社員の気持ちがわかる経営者になってほしい」、そのために「自社にしか勤めたことのない長男に、もっと幅広い経験を積ませたい」という想いをお持ちでした。その想いを知った、山科支店の営業担当者 清水は「何とか解決できないか」と当時の支店長に相談しました。
その中で、「当金庫堅田支店の取引先の旅館に研修として業務体験をしていただく」というアイデアを発案し、社長とマネージャーに提案。お二人はそのアイデアをすぐに採用され、金山マネージャーは3ヵ月の間、旅館での様々な業務を体験されました。
金山マネージャーは、これまで経験したことのない受付や客室清掃などを経験され、勤務時間帯も不規則であることから、金山精機製作所との働き方の違いに、当初は戸惑いがありながらも、次期社長として会社をより良くしていくために、多様な経験を求めて前向きに勤務されました。
新製品の開発への想い
金山社長が抱えるもう一つのお悩みは、会社を紘己さまに引き継ぐまでに「会社の将来に必要な新たな収益の柱をつくりたい」というものでした。また、「現状は業績好調であるが、いつ何時どうなるかわからない。会社の将来のためにも、新たな事業を作っていく過程を長男に任せ進めていきたい」との想いもお持ちでした。
金山社長は、多くの事業者が新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受ける様子や、アクリル板越しに会話しなければならない窮屈な状況について、「パーテーションがなくてもコミュニケーションをとることができ、さらにコロナや感染症を根本的に防げる何かを作りたい」という考えをもたれていました。清水は社長の構想を知ると、それを実現させるために、すぐさま行動に移しました。
清水は、新たなチャレンジをはじめるには、補助金の活用が最適だと考え、金山社長にご案内。社長はすぐに補助金の申請をされ、マネージャーの紘己さまをその責任者として事業をスタートさせました。
製品づくりへのこだわり
金山社長が構想されていた製品は、飛沫感染防止のアクリル板に代わる「エアーマスク(風を送風してエアカーテンを作る装置)」で、机の上などに設置した送風ユニットから上部に風を送り、上部の照明装置から吸い込んで空気を除菌するというものでした。
当初の計画では照明装置の部分を大阪の企業に依頼するつもりでしたが、補助金を利用する事業であることから、できる限りオール京都の企業で新製品を開発し、京都に貢献したいと考えられていました。
そのような中で清水は、自身の担当先で、照明装置を製造している株式会社飯田照明さまから除菌機能を持った製品を開発したとの話を聞き取り、感染症対策への想いや考えが合致する両社を引き合わせました。この引き合わせをきっかけに、両社の共同開発がスタートしました。
さらなるビジネスマッチングで協力!
共同開発が実現したことで、技術的には製造できるようになったものの、洗練されたインテリアとしての審美性を兼ね備えた製品にするには、プロダクトデザインを得意とする企業の協力が必要でした。同社でも協力企業を探されたものの、思い描く協力先が見つからず困っておられました。
清水は協力企業を探す方法として、当金庫内の社内ネットワークツール「ビジネスマッチング掲示板」の活用を提案。社長に承諾を得たうえで、プロダクトデザイン会社の紹介依頼を掲示板に投稿し、全職員に共有しました。すると、当金庫 銀閣寺支店の職員より、オーラボ株式会社さまの紹介があり、引き合わせを行ったところ、新製品のプロダクトデザインにご協力いただけることになりました。
コロナ対策製品「SFREEN」のデモ機が完成!
ビジネスマッチングによる2社からの協力を経て、製品開発は進んでいき、金山精機製作所さまの高い技術力を活かしたコロナ対策製品「SFREEN(スフリーン)」のデモ機が完成しました。デモ機の完成に伴って、知財対策面も考慮。京都産業21を通じて発明協会をご紹介し、新製品の知財プロテクトの話も進めていくことになりました。
製品名「SFREEN」は「SCREEN」と「FREE」を掛け合わせた名前になっており、「遮るものは何もないけれどスクリーンがあるように安心できる」という意味が込められています。デザインだけでなく、ブランディングも得意とされるオーラボさまがSFREENロゴや印刷物のデザインを含め、考案されました。
デモ機の完成後、清水は異動のため山科支店を離れましたが、担当を引き継いだ山科支店の職員 中村によって、支店にデモ機を設置したり、市場・マーケットでの販売に向けた調整をサポートしています。
お客さまの声
株式会社 金山精機製作所
代表取締役社長 金山 隆さま
旅館への業務研修を紹介していただいたとき、私たちの仕事はサービス業でもあるので、そこで「礼儀作法や言葉遣いを学べると良い」と考え、清水さんにお願いしました。また、SFREENの開発ができたのは、清水さんあってのことだといっても過言ではないほどに、多くのことに協力いただきました。清水さんは本当に動きが早く、ひとつ相談すると、すぐにあたりをつけて提案や行動が返ってくる。そういう実行力のある方だと思います。本当に清水さんには感謝しています。
お客さまの声
株式会社 金山精機製作所
マネージャー 金山 紘己さま
会社を継ぐ立場になると考えたとき、今の自分が持ってる経験値だけでは足りないと考えていました。旅館業は人との付き合い、お客さまへの対応、部屋の清掃、料理の提供など幅広い業務内容なので、多様な経験ができると思い、前向きに全力で従事させていただきました。清水さんには、色々な相談をさせていただき、どんなときでも誠実に、そしてすごく早く行動に移していただいた印象があります。SFREENの開発時には、たくさんの企業との非常に良いマッチングもしていただき、それがなければSFREENはできていなかったと思うので、本当に感謝しています。
担当者の声
山科支店(当時) 清水 吉朗
今回、一連の流れを通じて、金山社長が考えておられた会社の2つの課題解決のお手伝いをさせていただくことができました。異動の際には社長とマネージャーのお二人より「君がいなかったらこの製品は完成していない。本当に感謝しています」と言うお声をいただきました。営業としてのやりがいと当金庫の目指している課題解決型の営業方針が間違っていないことを再確認できました。今後もお客さまのお役に立てる活動を続けていきたいと思います。
当金庫は、これからも事業者さまが抱える課題の解決を目指し、積極的に活動してまいります。